ふと思い出した。
上京一日目のこと。
引っ越ししたてで荷物が雑然と散らばる1Kの部屋に父親と二人。
黙々と片付ける。
蛍光灯の真っ白な光がこのスッカスカでピッカピカの空間の寂しさをより引き立てる。
落ち着かないなぁ。
そのうち父親の大学時代の友人が訪ねてきた。
確かI○Mに勤めていたというその人は、私が高校生の頃にThinkPadのノートパソコンをくれた人だった。
ありがとう。I○Mおじさん。あのパソコンは文字通り使い倒したよ。
上京祝い的なニュアンスで父親たちの大学時代の友人がやってるバーに行くことになった。

生まれてはじめての東横線に乗る。
よく覚えているのが東横線カラーのピンクの車両。
電車がホームに到着し人が乗り込む。
「こんなに人がいるのにどうやって乗るの?」
と内心思ったがI○Mおじさんが、
「まだ空いてるね」
と言うので私と全然違う感覚でいることにすごくカルチャーショック的なものを感じた。

中目黒駅で日比谷線に乗り換える。
右も左も真ん中もわからないくらい人に揉まれながら歩いた。
目的地は恵比寿って言ってたっけ。
名前くらいは知ってる。

ついたときはすっかり夜だった。
駅前を抜けてJR線と平行して人通りが少ない方へと歩いていく。
ちょっとした坂道を夜風を感じながら歩いていく。
「自分、今すごい背伸びしてる」
都会人になったような気分にもなったけど、リアルな今と自分の内心が乖離しすぎてて若干の居心地の悪さもあり…。
路地をちょっと入ったところにそのバーはあった。

通りに面した1階で大きなガラス張りの窓。
店内の照明はバーらしく薄暗く、東横線カラー(ピンク)だった。
あ、変な店じゃないよ(笑)
お店は父親の大学時代の友人夫婦がやっていて、確かその女の人は「マドンナ」と呼ばれていた。
確かにマドンナと呼ばれるのがわかるような仕草、顔立ち、話し方。
自分とは全然違う生き物だな。
何が飲みたいかと聞かれたのでとりあえずジントニックを注文。この頃はジントニックくらいしか飲めなかった。
父親たちは「まずは生で」と言っていたけど、ビールのことを生とかって言うのにもすごく大人感(語彙力)を感じた。

店内の壁には大学のフラッグ?のようなものが飾ってあって、そこの大学御用達のバーかなんかだったのかな。
何を話したかは全然覚えていない。帰り道も帰りの電車のことも。
紳士淑女方にまじって、初めて過ごした東京の夜。
そんな思い出。
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